こんにちは ふーみん です。
6月に開催された、日本血液疾患免疫療法学会に弊社も出展させていただきました。
本学会はハイブリッドでの開催でした。
展示ブースに直接来られ方々、オンラインでご覧いただいた方々、ありがとうございました。
東京では先日再度緊急事態宣言が出てしまいましたが、オンサイトで実施される学会は久しぶりだったのではないでしょうか。
弊社の展示ブースでは、米国bionano Genomics社のSaphyr®システムをご紹介させていただきました。
ちなみに、「サファイア」と呼びます。バーチャルラボはこちらから。
このSaphyr®システムを用いて実施するオプティカルゲノムマッピング解析ですが、
弊社 殿町ラボ でも受託解析を提供しています。
アプリケーションは、大きく分けて
・ゲノム構造多型の検出(Structural Variation)
・ゲノムアッセンブルの改善(Hybrid Scaffolding)
の2つです。
ヨーロッパやアメリカでは、主に
・ゲノム構造多型の検出
のアプリケーションで利用され、血液腫瘍などで多くの実績があります。
核型分析や染色体アレイなど、
従来の細胞遺伝学的解析に代わる技術として
Saphyr®が注目を集めています。
がんゲノムはたいていの場合、多くの染色体構造異常(structural variants)を示します。リード長が制限されるNGS(次世代シーケンス)では、一連のクロモスリプシス(染色体破砕、Chromothripsis)を検出することは難しいと言われています。
下は、患者由来の乳がん細胞株のSaphyr®での解析例です。
青色のバーが、Saphyr®で取得したマップ、緑色のバーがリファレンスのマップです。
Aの領域では、7番染色体と10番染色体の転座
Bの領域では、約1.6 Mbpの欠失
Cの領域では、逆位
Dの領域では、約400 kbpの欠失
が起きています。
このように非常に複雑な構造異常の検出も、オプティカルゲノムマッピングでは可能なんです。
また、前身の装置であるIrys®システム(アイリスと呼びます)の頃より、
・ゲノムアッセンブルの改善
に、Hi-Cと共にオプティカルゲノムマッピング解析が利用されることも多く、日本でも多くの需要があります。
両方のアプリケーションとも、ゲノムDNAを抽出してSaphyr®装置で解析するというワークフローは同じです。
1. 長鎖DNA(ultra-high molecular weight DNA)の抽出
2. 配列特異的なDNAの標識およびDNAの染色
3. Saphyrシステムにてデータ取得
4. パイプラインを用いたデータ解析
概要は、↓↓こちらの1分間動画↓↓ でもご確認いただけます。
お気付きかもしれませんが、オプティカルゲノムマッピング解析ではDNAの塩基配列自体は読みません。
配列特異的に標識したDNA断片の撮影を行います。
取得した画像データは、DNA1分子毎に、標識部位の間隔情報を持ったテキストファイルに変換されます。その解像度は500 bpです。
これがSaphyr®システムの生データで、BNXファイルと呼びます。
ヒトやマウスで多くご利用いただいている、ゲノム構造多型の解析では、
このBNXファイルを元にコンセンサスマップを作成する、de novo assemblyやrare variant analysisなどのパイプライン解析を行います。
NGSから得られた配列情報(reference genome)と比較することで、挿入、欠失、重複、転座、逆位などの染色体上の大きな構造変化を検出します。
ヒトの場合、リファレンスとしてhg38やhg19は、Saphyr®システムに登録されていますが、FASTAファイルの配列情報を取り込んで、別途作成することも可能です。
弊社の受託解析では、検体をお送りいただきます。
長鎖DNA (ultra-high molecular weight DNA)の抽出から作業を行います!
対象検体は、
ヒト:培養細胞、血液(感染がないもの)
動物:培養細胞、組織
植物:幼若葉が望ましい
などです。その他の生物種はご相談くださいね。
bionano社のキットを用いてDNAの抽出を行いますが、
検体の状態や部位によっては、どうしても抽出できない場合もあるようです。
ご発注に先立って、打ち合わせを実施していますので、詳細は弊社の技術者にご確認ください。