nCounter遺伝子発現解析 RNAのQC

こんにちは ふーみん です。


nCounterを用いた遺伝子発現解析では、

分解が予想されるFFPE組織由来のRNAからでも再現性の良い結果が期待できます。

『QPCRやNGSでは解析できなかったけど、nCounterでは解析できた』

という声も聞かれます。


抽出したRNAの品質の指標としてRIN値がよく用いられますが、

nCounterでは、RIN値よりも「分解度」を指標とすることが推奨されています。

NGSのライブラリー作製の際に用いられるDV200値です。


nCounter解析では、RIN値はどのくらいまで許容ですか?

とのお問い合わせをユーザーさまからよくいただきます。

RIN値ではなく、分解度(DV200)をご確認ください。


nCounter解析では、

『200 nt長以上のRNAが全体の50%以上であること』

が推奨されています。

弊社では、アジレント・テクノロジー(Agilent Technologies)社の

キャピラリー電気泳動システム(Fragment Analyzer System)を使用していますが、

一般的にはその他に、TapeStationやBioanalyzerなどもよく使われます。


DV200の実例を見てみましょう。

以前、デモデータを取得した際に、Fragment Analyzerを用いて行った解析です。

ヒト肺癌細胞株A549から、QIAGEN社のRNeasy を用いてtotal RNAを調製しています。

ちなみに、nCounter解析に用いるRNAは、カラムを使用するタイプの市販の抽出キットをお使いいただけたら、問題ないですよ。


ここでは、サンプリング後直ぐに凍結保存した培養細胞からRNAを抽出しているので、一目瞭然で品質は良いですが、

FFPE組織由来のRNAは、たいていの場合、ピークが低分子量側(左)に現れるのが特徴です。


実際にFFPE組織由来のRNAデータをお見せできたらいいのですが、

ユーザーさまのデータになってしまうので、あしからず。

代わりにnCounterのトレーニングキットに付属する、

Human Reference RNAを使用して、分解したRNAを準備してみました。

10種類の細胞株から抽出したtotal RNAの混合物です。

比較するために、分注後3日間あるいは7日間室温に放置しています。

上から、-80ºC保管、室温3日間、室温7日間のデータです。

ちゃんと分解していてくれました(笑)。

やっぱりRNAの保存は、-80ºCですね。


確かにRNAの分解が進んでいるのですが、

DV200値を見るとnCounter解析では問題にならないレベルです。

(上から、-80ºC保管: 96.6%total、室温3日間: 92.7%total、室温7日間: 89.6%total)

FFPE組織由来のRNAの場合は、DV200値が20-40%totalくらいで、

ピークがさらに左側が出てきます。

実際にこれらのRNAを使用してnCounter解析を行うと、

下図のように、相関が見られています。


これはraw dataをプロットしたものです。

横軸に-80ºC保管していたRNA、

縦軸に3日間あるいは7日間室温に放置していたRNA

のカウント値をとっています。

使用したパネルは48遺伝子が収載されたものです。


手技や装置内の精製過程での"ピペッティングエラー"でカウント値が多少バラついたとしても、

Housekeeping遺伝子などでNormalizationを行えば綺麗な相関が見られます。


弊社の nCounter発現解析受託サービスでは、

お送りいただいたtotal RNAのクオリティーチェック(QC)後に、

nCounterでの解析を行っています。

分解が進んでいても(DV200が50%以下でも)、

input量を増やして補正することで、解析が可能な場合もあります。

お気軽にお問い合わせくださいね。